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この文の後ろに花畑がある、ということにしておいてください。

【読書感想】『ニューロマンサー』内容を理解しようと思ってはいけない。サイバーパンクを感じればそれいい。

「内容はよく分からないけど、これはすごい小説だ」

これが、読了後まず真っ先に浮かんだ感想だ。

ニューロマンサー』は、ネビュラ賞ヒューゴー賞フィリップ・K・ディック記念賞、SFクロニクル誌読者賞、ディトマー賞と五冠を達成したものすごい怪物作品で、サイバーパンクの始まりを築いたと言われる。

各所レビューでは、肯定的な評価が多数を占めていたので、いざ我も楽しまんと意気揚々とページをめくっていくのだが……サイバーパンクとはこうもSFリテラシーの高さを要求するのかと愕然とした。固有名詞が多すぎて、今どんな状況なのか、誰が何について話しているのかがとても分かりづらい。会話も対象を明確に口にはしないで、比喩的、皮肉めいた表現が多く、何が言いたいのかを掴むのに苦労した。大げさじゃなく、ジャック・インしてジャック・アウトしてフリップしたなくらいしか理解できていなかったと思う。敵や他の登場人物がが何を考えていて、何がしたかったのかものかよく分からずじまいだった。

この作品を高評価してる皆さんは、この作品の内容を理解してレビューを投稿したってことでいいんですか?だとしたら、僕はギプスンを読めるほど脳がお利口ではなかったということになる……全体の3~4割くらいしか理解できていない自信がある。特に後半からは内容がほとんど理解できなかった。読解力は人並み以上だと思っていた僕のちんけなプライドがズタズタにされた。

 

でもこの作品のすごいところは、内容が理解できていなくても不思議と読めてしまうところにあると思う。なぜ理解できないのに読めるのか?『ニューロマンサー』の世界観、舞台設定に答えがある気がする。固有名詞の1つ1つは意味が分からなくても、でたらめに配置されているわけじゃない。それぞれが『ニューロマンサー』の世界をつくるピースとしてちゃんと機能してる。少なくともそう思わせることはできている。サイバーでロックな世界を描くなら、お子様でもすぐに分かる文章じゃつまらない。サイバーパンクという世界そのものが、そんなに単純に理解できるものじゃない。その世界がわけが分からないくらい複雑でカオスなところに本質があるからこそ、文章や単語もそれに応じて表面を見ただけでは全てが掴めないようになっているのだろうか。その「底の見えなさ」を読み取ることが、『ニューロマンサー』を楽しむ秘訣なのかもしれない。

結局この本をSFリテラシーがない人はどう読めばいいのかというと、文章が分からなくても、そのまま勢いよくページをめくっていくのが正しい楽しみ方なんじゃないかと思った。本当に内容を理解したいなら、再読、再再読必須。

ディファレンス・エンジン』も一緒に買ったんだけど、きっとこれも一筋縄ではいかないんだろうなあ……

 

 

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)