ハナサケハートフルハーモニー!

この文の後ろに花畑がある、ということにしておいてください。

【読書感想】『BEATLESS』AIと双方向のコミュニケーションはできるのか

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ヒトヒラさんのこの記事を見て、興味が出て僕も文庫版で読みました。面白かったので感想を書きます。

 

AIと人間は両想いになることはできるのだろうか?この本を読み終わった際、そう思わずにはいられなかった。

 

作中で度々出てくる「アナログハック」という概念。簡単に説明するのが難しいが、アンドロイドを見た人間は、それが人だとは見分けがつかないから人間を相手にしていると錯覚する。アンドロイド側は自分が人間であるように見せかける言動を取り、信用を得る。そしてアンドロイド側はその信用をもって、人間を誘導したり、好意を持たせるのだ。

ヒロインでhIE*1のレイシアは、美少女で家事も完璧で、主人公が求めていることを読み取ってそれに対する最適解の行動を取れる。もし現代で技術が大幅に進歩して、レイシアのような超高性能AIが何手も先回りして我々の望むような反応あるいは期待を超えるようなケアをしてくれるようになれば、楽なのは間違いない*2。でもこれは、自分がそう望んだから、自分がこうしてほしいと願ったから彼女が計算して答えを算出しているに過ぎない。身も蓋もないこといえばそういうことになる。だがそういう概念を作っておいて、この作品はボーイ・ミーツ・ガールを示そうというのだ。どういうボーイ・ミーツ・ガールの答えを出すのかは、是非作品を読んで確認していただきたい。

 

そんな難しいことはどうでもいいから、ロボットの実用化を早く!と切に願っている人は多いだろう。具体的には介護の現場とか。近年は、介護職員が入居者を負傷・死亡させるという報道を目にする頻度が上がってきているので、ちゃんと世話してくれるかどうかわからない赤の他人よりも、ロボットに世話をさせた方が安全だと考えている人も一定数いすはずだ*3。ロボットはロボットでほんとうに運用に耐えられるか(誤動作しないか、ハッキングされないか、メンテナンスはしやすいかetc…)どうかという気になる点はあるだろうに、そういう話をほとんど聞かない。

でも介護って、ただ身の回りのケアをするだけではなくて、職員との、人間対人間の双方向コミュニケーションがすごく重要なはずだ。AIには「双方向に見える」コミュニケーションはできても、人間対人間の「ゆらぎ」のある双方向コミュニケーションは流石にできないのではないかと思う。まあ、これもデータの蓄積で「ゆらぎがあるように見せかける」コミュニケーションはできるだろうが、それは「ゆらぎ」があるのとは違う。介護の現場はこんな話をしていられないくらい人手不足だからとりあえずロボットでも何でもよこせ!ってなってるんだろうけれども。

 

こういう見せかけのコミュニケーションしか取れないのだから、人間とAIの双方向のコミュニケーションは、どんなに技術が進んでも不可能なんじゃないかと思うのだ。現実では、AIと人間のボーイ・ミーツ・ガールは夢のまた夢のように見える。

 

こういう高度な AIが登場するような未来では、人間の地位はどうなるのだろうか。きっとAI排斥派が生まれるだろうし、AIを今以上に推進する人も大勢生まれるだろう。

作中のようなシンキュラリティを軽々踏み越え、人間では理解しようのない超高度AIが出現しえるのかは、疑問だ。いや根拠があるわけでもないのだが、そんなものどうやって誕生させるのか見当もつかない。人間では見当がつかないから超高度AIなのだろうけど。

 

全然うまくまとめられなかった。

この本、この記事では伝えきれなかった考えさせられるポイントが多いので、AIとは何か、AIが進歩したら人間は、世界はどうかるかが気になる人は絶対裏切らない作品だと思います。

あとこの作品、上下巻併せて1200ページというストロングスタイル(単行本が初出ですが、角川文庫の上下巻の方は加筆修正されているので、そちらを買いましょう)なので、読書慣れしていない人はじんましんを起こさないよう気を付けるか、アニメ版を見ましょう。

 

最後にこれだけは言わせていただく。

メトーデがあまりにも不憫で悲しに包まれた。メトーデIFを所望する!

アラト君とメトーデがオーナー関係になっていたら、メトーデがツンデレハイスペックhIEが見れただろうになあ……

 

BEATLESS 上 (角川文庫)

BEATLESS 上 (角川文庫)

 

 

BEATLESS 下 (角川文庫)

BEATLESS 下 (角川文庫)

 

 

Contract
 

 

 

*1:要は人間と見分けがつかないようなアンドロイドだと思ってくれればいい

*2:しかもそれを美少女AIにされたら…本当に「人間はクソ」と考えかねない

*3:この問題はシェリー・タークル『つながっているのに孤独』ダイヤモンド社に詳しく書かれている